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「それにしても……」
タスクは言いながら首だけで後ろを振り向いて、
「こら! 止まれと言うのが聞こえんのか! 無駄な走行は止め、速やかに停車しなさい!」
「今日はしつこいな……」
聞こえてくる野太い声に顔をしかめた。
ラズリーがそうだねー、と同意した。
「おっちゃんはほんと頑張り屋だよねー。感心しちゃうよ」
「別に暇なだけだろう」
「あははっ、酷いなあ」
ラズリーはからから笑いながら、追ってくる二輪車をかえりみた。
こちらがかなりの速度で走行しているため、中年男性もかなり必死にペダルを漕いでいる。
汗の吹き出る赤い顔が、手に握ったリンゴによく似ていた。
「おっちゃーん! 今日はもう無理しないで一休みしたほうが良いと思うよー!」
「やかましいわ! いい加減止まれ!」
労りのつもりだった言葉も虚しく、激怒した怒鳴り声に跳ね返された。
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