第一幕

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           「それにしても……」 タスクは言いながら首だけで後ろを振り向いて、 「こら! 止まれと言うのが聞こえんのか! 無駄な走行は止め、速やかに停車しなさい!」 「今日はしつこいな……」 聞こえてくる野太い声に顔をしかめた。 ラズリーがそうだねー、と同意した。 「おっちゃんはほんと頑張り屋だよねー。感心しちゃうよ」 「別に暇なだけだろう」 「あははっ、酷いなあ」 ラズリーはからから笑いながら、追ってくる二輪車をかえりみた。 こちらがかなりの速度で走行しているため、中年男性もかなり必死にペダルを漕いでいる。 汗の吹き出る赤い顔が、手に握ったリンゴによく似ていた。 「おっちゃーん! 今日はもう無理しないで一休みしたほうが良いと思うよー!」 「やかましいわ! いい加減止まれ!」 労りのつもりだった言葉も虚しく、激怒した怒鳴り声に跳ね返された。
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