言葉の力

2/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「……」 闇が広がる真夜中にぽつんと少女が一人 身長は低く髪の毛は膝下辺りまで伸びている 何より目を引くのは少女の頭にはえた獣の耳 腰辺りから伸びた獣の尻尾 彼女は今とある探偵事務所の前にいる ここは【國見探偵事務所】 表向きは探偵事務所だが実際は違う 少女は事務所の向かい側から中を見つめている 少女が見つめているのはこの事務所の所長 國見 澤(くにみ たく) 探偵事務所の所長にして西日矢学園の教員 彼が窓のなかで忙しなく動く姿を少女は見ていた ――――國見探偵事務所 「えーっと、これが先月の未達成の依頼のリスト、これが今月の携帯料金………」 忙しい 一言で言えばそんな感じ いままでのミッションや作戦等と違い大胆且つ慎重に事を進めなければならない 「これが先月の弾の領収書で………だぁーーっ!」 ばらばらになっている書類を撒き散らしてみた ………減るわけ無いか……… いや、いろんな意味で減ったかも……… 部屋のなかに静寂が訪れる 学園からの増員があるまでは1人で事務所を切り盛りしなけねばならない 所長席に深く腰掛けタバコを取り出す 静寂が包む部屋のなかに紫煙が流れてゆく 「……」 一息入れて落ち着くと妙な視線を感じる 複数の…いや一つはテレビか… もう一つは部屋の隅に置かれた姿見 そしてほぼ真後ろの… 「くしゅんっ!」 ……… 取り出しかけた相棒をしまいなおす 「どちら様?」 「あ」 振り替えると真夜中に花が咲いていた ただし一本だけ だがその花は普通の花より大きく 季節ハズレに咲いていた そう…その花は 「桜…」 俺は知らず知らずのうちにつぶやいていた
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!