エメラルド

静かなキッチン

台所は長い間使われていないような様子だった。

どこだってピカピカで汚れひとつ無い。

それだけ生活感が無いのにパンと林檎は痛んでいないようだった。

すり硝子の窓から注がれるオレンジ色の光が綺麗だ。
林檎とパン、あとは水の入ったコップがあればデッサンの練習にちょうどいい。

私は洗い場の蛇口を温水のほうにひねった。

しかし出てきたのは水ではなくマーマレードだった。

手について不愉快だが洗うことができない。
お湯をひねったからいけないのかもしれない。
今度は水の方にひねった。

･･･出てきたのは、泥水だった。