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「ん。半分持って」
「…えっ!?」
私の目の前に立った彼は、真剣な表情でそう言うと、私にプリントを持つように促した。
戸惑いながら半分より少し多めにプリントを取ると、不服そうに眉を潜める彼が見えた。
「桜井の方が多いじゃん」
そう言った彼は、片手でプリントを抱えると、もう一方の手で私が持っていたプリントの上の何枚かを奪い、これでいい。と満足げに微笑む。
──その笑顔は、本人は自覚が無いんだろうけど、とても可愛くて。でも、格好良くて。
「よし、行くぞっ」
気付けば、階段を駆け上がる彼の背中を無我夢中で追いかけていた。
口元を僅かに緩め、はにかむような笑顔を見せていた自分に気付かぬまま。
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