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それからというもの、私の視線の先には、常に緒方君。
彼がバスケ部と聞いて、バスケ部のマネージャーにもなって。
昔の私じゃ考えられない程、彼だけに夢中だった。
──でも、彼の隣には、私の居場所は無い。
「緒方君ってさ、年上の彼女と付き合ってるらしいよ」
「はっ?」
ある日の朝。
突然、ゆきに言われた言葉で、私の思考回路は閉ざされる。
「しかも、咲瀬先輩。超美人で有名だよね」
頭が痛くなった。
彼女が居なければ、彼が私の彼氏になるだなんて思っていたわけじゃないけど。
心に突き刺さるような痛みを覚えて。
「ちょっ…。何、泣いてんのよ…」
気付けば、泣いていた。
好きな人が緒方君だってゆきに言ってなかったから、何も知らないはずなのに、ゆきは何も聞かずに私を抱きしめてくれた。
ごめんね。って微かに聞こえた気がしたけど、私は泣く事に夢中で気付かなかった。
そして、泣き止んでしまった時、私の心は、ひどく醜くなってしまっていたの。
醜い、汚い。
そう思っていた女の子の嫉妬が、私の中にも芽生えてしまった──。
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