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「…桜井みちる」
「みちるちゃんかぁ。名前まで可愛いね」
「あ、ありがとう」
ニコッと笑う彼女の笑顔は今までの女の子たちからの視線とは全く違っていて、褒められるのには慣れているはずの私の頬は赤く染まった。
「みちるって呼んでもいい?」
「う、うん。私は…、ゆきって呼ぶね」
「もっちろん、いいよ」
「ありがとう」
そう、私が緩く微笑めば、ゆきも白い綺麗な笑顔を見せた。
──無邪気な笑顔と顎の横までの長さしかない短い髪を持った“佐久間ゆき”。
これから先、とてつもなく酷い事をして、犯罪まがいな事さえしてしまう私を見捨てない、唯一の友人となる彼女との出会いも、この春の事だった。
そうやって、ゆきとの出会いに感動してしまっていた私は、もう一つ、私を大きく変えてくれる彼が教室に入ってきた事に気付かなかった。
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