126人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「──ったく…。なんで、私が、こんな事…」
「しゃーないでしょ。みちるが、川崎の授業ん時に携帯なんかイジってるから…」
「だって、アキラが…」
「アキラ?また、新しい男だね。何?みちるの彼氏?」
「違う。自分を彼氏と勘違いしてるサブい男」
「うわぁ。ひっどーい」
入学式から一週間。
私は、たくさんのプリントを抱えながら廊下を歩いていた。私の横にはケタケタと笑うゆきの姿。そんなに暇なら手伝ってよと言いたいが、彼女が手伝ってくれない事は、この一週間でよく分かっていたので頼まない事にした。
何故、こんな状況になったかと言えば、全ての原因は会話の通り、アキラのせい。
アキラっていうのは、私をナンパしてきた顔は悪くない男なんだけど。
そいつが、授業中にも関わらず、何度も何度も執拗にデートのお誘いメールを寄越すから、耐え切れなくなった私がいつものセールスメールで甘く断ろうとしたら、化学の川崎っていう厭味ったらしいで有名な先生に見つかり、プリント運びを命じられたっていうわけ。
「アキラとは二度と連絡取らない…」
そう、私がしゅんとしながら言えば、ゆきの手が私の頭にぽんと置かれ、
「おーおー。そうしろ、そうしろ。あんた、来る者拒まずだから、バチが当たったんだよ。たまには拒め」
と、声が降ってくる。そんな彼女の言葉にニタリと笑って、
「だって、私が何もしなくても寄ってくるんだもん。向こうから」
と、冗談っぽく返せば、
「へーへー。そうっすか。モテる女は大変っすな」
そう、私の頭から手を離しながら言うゆき。
「それじゃあ、モテないあたしは、便所に行ってくるから、あとは一人で頑張って」
「ちょ…、待ってよ。しかも、便所って何。便所って…」
片手を上げ、去って行くゆきの背中を、私がプリントを抱え、呆れ顔で眺めていたのは言うまでもないけど。
最初のコメントを投稿しよう!