初恋のアナタ

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  ─────…‥ 「やっぱり、うちのクラスでの格好良さは尾長が断トツだけど、優しさと笑顔なら緒方君だよね」 「へぇ…」 たいして興味も無かった私は緒方君の顔も尾長君の顔も思い浮かばなかった。 「緒方君のお兄さん、かなり格好良いし」 「………」 「緒方君は、あんまりお兄さんに似てないけど、彼は彼でイイ男だし」 「……うん」 「でも、やっぱり、尾長が一番かなぁ…」 その時は、どっちの事も分かんなかったけど、ゆきに教えられて、初めて、彼を見た時は、心臓が可笑しくなったみたいに跳ねた。 まるで、一瞬で、彼に恋をしたみたいに。 ─────…‥ 「はい、これで、最後」 「あ、ありがとう」 笑顔の彼に、拾い終わったプリントを渡される。 それを、再び積み重なったプリントの山の上に乗せ、私が抱えようとすると、横から彼の腕がすいっと伸びてきた。 「化学準備室だっけ?」 プリントを抱えながら、さも当たり前のように彼は言う。 「えっ…」 「運んであげるよ」 戸惑ってしまった私が、彼を見上げれば、大丈夫と子供を安心させるように緩く彼が笑うから、私はコクンと頷いて、化学準備室だよ。と返した。 「よしっ。…じゃあ、行ってくるね」 「えっ?…いや…、ちょっと待って」 「んー?」 私の返事に元気良く返し、階段を昇り始めてしまった緒方君を慌てて引き止めると、彼は不思議そうに、振り返る。 「いや、その……。私の罰だから、私が行かないと…。緒方君の行為そのものは嬉しいんだけど、やっぱり…。川崎、厳しいしさ…」 彼の視線が、妙に恥ずかしくて、もじもじしながら、そう伝えれば、彼は、そりゃそうだ。と階段をゆっくり降りて、私の目の前に立った。
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