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レオンは口を引きつって必死に怒りを抑えて無理して笑いながら話を始めた。
「…おじさん知ってる?この孤児院じゃあおじさん達みたいなのが一番偉いんだぜ?何たって神の使いだからな。……逆らえばどんな理由であれこうして殴られる。」
「………それは間違ってるぜ、坊主。」
「え?」
初めてだった。
物心ついたときから当たり前だったこの常識を否定されたのは。
「勘違いしちゃいけねぇよ。俺達は偉くも何ともねぇ。ただ自分の能力を生かして働いてるだけだ。」
「………」
レオンは動揺していた。
この男は今まであった大人とは違ったからだ。
「そろそろ、手続きやら何やら終わったころだな。じゃあな、坊主。」
胸のポケットから懐中時計を出して時間を確認した男は、白い手袋をした手でレオンの頭をポンポンと撫でた。
初めてされた感覚に、レオンは驚いて後ずさった。
その反応に笑いながら、中に入ろうとした男をレオンは小声で呼び止めた。
「あの、俺と会った事は言わないで下さい。…後でうるさいんで。」
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