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レオンの目の前にいる眼帯の男は鋭い目でロイスに怒鳴った。
レオンは嬉しかった。
自分の味方になってくれた大人なんて今までいなかったからだ。
レオンだけではない、フランツや他の皆もそう思っているだろう。
「神は気まぐれだ。魔法を授からなかった者だって当然いる。お前は教育者として、大人として、そんな事関係なく平等に接してやるべきじゃないのか?」
「………はい。」
厳しくも優しさも含んだ言葉にロイスは自らの行為を深く反省した。
「さて、帰るとするか。そこのガキに契約書書かせろ。」
「はっ!君、レオンと言ったね?」
「はい。…レオン・ルビルトです。」
名前を言うと、男は鞄を下敷き代わりに紙に色々書き始めた。
恐らく契約書だろう。
「よし。さぁ、君も車に乗りたまえ。」
その言葉に一番喜んだのはフランツだった。
「レオン!やったな!!」
「………」
しかし、レオンは素直に喜べなかった。
「……レオン?」
「……………かねぇ」
「え?」
フランツが聞き返す。
「俺、マリアにはいかねぇ。」
フランツの表情が固まった。
契約書も書き終わり、車の方へ行こうとしていた軍人も眼帯の軍人も、驚いた。
「な…何を言ってるんだ!?」
「そうだよ!ここよりずっといい暮らしが出来るんだぞ!?」
「………。」
レオンは固く口を閉じた。
そのレオンを見ていた眼帯の男だけは焦らずゆっくり語りかけた。
「…何か理由があるんだろ?言ってみろ。」
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