第九章

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「はいはい、ストップ」 手を出してきたのは、美しいブロンドが肩につくくらいの長さで、青い瞳の男だった。 その整った顔つきの真ん中には大きな切り傷があった。 制服は白地に二本の金のライン。 セカンドの軍医だ。 「邪魔すんな!ベル!」 「まぁ落ち着け"バリー"。また騒ぎ起こして謹慎くらっても知らないぞ」 「ぐっ……!」 バリーと呼ばれた男は渋々手を引っ込めた。 (た…助かった……) レオンはひとまず安心して男を見た。 オレンジ色の派手な髪色の短髪に緑の瞳、セカンドの制服。 何より驚いたのは彼には左腕がなかった。 ある筈のものがない左腕の袖はただヒラヒラと揺れているだけだった。 「……んだよ。見てんじゃねーよ」 「す…すみません」 怒りたいのはこっちなのに、なぜか謝ってしまった。 「君、もしかしてレオン・ルビルト?」 ブロンドの男が笑いながらレオンを指差した。 「……。今はただのレオンです」 「うん。で、本当は?」 「……は?」 レオンは思わず聞き返した。 「君は優秀なフランシスカ候補だった。だから、なんとしてもルカ・ルビルト"様"をフランシスカにしたいルビルトの奴らが君をはめたんじゃないか、と私は勝手に考えたんだけど…。違う?」 「………」 この男、本部との接触を制限されている身の上の割に妙にマリア本部での出来事に詳しい。 「図星だね」 「……そういうあんたは何やらかしてここへ?」 レオンはブロンドの男を睨みつけた。 だが相手は相変わらず楽しそうに笑っている。
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