第九章

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気がつけばレオンはマリア本部の近くまで来ていた。 もう自由に出入り出来ない場所なのに、思わず来てしまった。 「………」 しばらくその場に立ち尽くしていると、後ろから声をかけられた。 「ねぇ」 「君は…、さっきの…」 「ノア」 「あぁ…そうそう、ノア…」 相変わらずの無表情に乱れた身なり。 でもよく見れば綺麗な顔立ちをしている。 「ついてきたのか?」 「……ベルナルドが行ってやれって行った」 「あいつが…」 彼の名前が出たことにレオンは再び苛立ちを覚えた。 「はっ!今俺がどんな顔してるか見てこいとでも言われたのか?」 「……見えない」 「は?」 ノアが俯きながら小さく言った。 「見えないから…、分からない」 そう、彼女は目が見えないのだ。 そうなら彼女の身なりも、幼くして第零部隊に配属された事にも説明がつく。 「……ごめん。全然気付かなかった」 「いい。慣れてる」 レオンがそういうのも無理はない。 ノアは目が見えないにも関わらず普通に歩き、障害物を避け、人物を特定出来ているからだ。 不思議に思い彼女に聞いてみれば、サラリと言われた。 「光の具合、慣れ、勘」 と、なんとも腑に落ちない答えが返ってきた。 「―――…帰らないの?」 ノアが切り出す。 「……お前は嫌じゃないのかよ。あんな犯罪者ばかりの部隊」 「………」 レオンの後ろに立っていたノアはレオンの隣まで来て、話を始めた。        
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