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ユキオはどうしても岩田の話していたトンネルの事が気になり
確かめに行くことにした
新たにトンネルの開発が進む新道予定地を過ぎ
しばらく車を走らせた所に岩田の家はある
その先‥
陽の落ちかけた山道
何かを目に捉えたわけでは無かったが
人間‥何かしら嫌な予感というのは在るものだ
少し暑くさえ感じる季節に差し掛かったこの時期に
身を震わせた理由をユキオは“予感”としか処理しきれなかった
トンネルの前に来た
恐怖を打ち破るように車のヘッドライトを上げた
一瞬
ユキオは来た事を後悔した
例のシミの前にはおぞましい数の花が散在している
だが‥
異様と思わせたのはそれよりもやはりシミの方だった
座した仏というより
疑いようもなく
くっきりと女性の顔だったのだ
新道が完成してからは誰もあのトンネルは通らなくなった
勿論シミとの関連性など計り得ないが
岩田の家族は
その後都会へと出て行き
行き先の知れぬ長女以外は新道が完成するまでの一年内に親も嫁さんも長男も亡くなられた‥
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