2章 ~アストレア~

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 いつものように、日経新聞の読み合わせから始まる。  大学を出たばっかりのおバカな女の子達は、こうでもしないと新聞を読まないからだ。  今日は、いつもの惰性じゃなくて、使命感を持って買いましたよ。  続報があったから。  そして、いつもの決まった台詞。 「何か連絡事項はありますか?」 と、飛鳥の透き通った声。  男も女もこれと顔に騙されるわけだけど。  部長が進み出た。  うー。ヤだなあ。 「えー、みなさん、おはようございます」  働き盛りの41歳は、いつものいい声を張り上げた。  なんか、さっきから声がいい人ばっかしゃべってるなあ。  部長の声は、実際、野村萬斎さんみたいないい声なんだけどさ。 「昨日の報道で、みなさんもご存じかと思いますが、我が社は、更生特例法を申請し、事実上の破綻をしました。今後は管財人が更生手続きを進めることになりますが、細かいことはまだ協議中ですので、おって連絡いたします」  つまり。  まだ何にも決まってないから、当分、顧客対応のために残れ、ということだ。  給料がどうなるのかもわからないけど。  協栄生命のことは知らないけど、千代田生命のことは、噂で聞いた。  先日、更生まで現在の給料を保障、ボーナスも夏ボと同額出るらしい。  うまく職員を引き止めたよね。  うちもそうなるなら、残ってもいいかな。  ボーナスもらうまで。
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