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私は、同期の伊藤舞子に顔を寄せた。
寄せたと言っても舞子のデスクは向かいなので、ぐぐっと身を乗り出して、舞子の顔をのぞき込む格好になる。
「まあちん、何人おる?」
“まあちん”は、“まいちん”がなまった呼びかただ。
去年、飛鳥が同期全員を“ちん”付けで呼び始めたの最初だった。
私が“結衣”だから、“ゆいちん”と“まいちん”だとわかりにくいということで、いつの間にか舞子のほうが“まあちん”に変わっていた。
ガキっぽいけど、妙な一体感があって、一期生は実によくまとまっている。
舞子は、私の簡単な問いだけでわかってくれた。
「多いよ。関連会社が全部私になっとるから、ざっと見ただけで120人くらい」
「マジで? じゃあ、私は少ないわ。100人おらんくらい」
「これ、人によってかなり違いそうだね」
隣りの二期生も、プリントアウトした名簿を見て唸っていた。
二期生二人も5~60人程度はいるようだ。
うちのチームは4人。うち一期生2人、二期生2人で、男チーフの鬼頭泰利チーフのデスクが引っ付いている。
鬼頭チーフは28歳。小さいイケメン。
なんというか、微妙。
4人で大きな溜め息をついていると、鬼頭チーフが、
「人数が多いのはわかっとる。だで、さっさと行動する」
と、尻を叩いてきた。
なんとなくイラっとしたので、反抗してみた。
「昼休み以外は電話しないように言われてるんですけど」
「家に電話すればええが。奥さん、おるだろ」
ごもっとも。
すごすごと引きさがった私は、端末に向かって、自宅の電話番号がある契約者を探した。
名簿には、姓名と勤務先と、加入商品しか載っていなかったのだ。
つくづく使えない端末だよ。
もともと、本当に使えないんだよね。
形はノートパソコンのディスプレイだけ、というとわかりやすいと思う。
それにケーブルでキーボードが繋がっている。
持ち歩いて、その場でプランを出せるという発想で作られたらしいけど、重いし、何より、“仮定”の計算しかできないので、持ち歩いている丸生営業職員はいなかった。
破綻してからもウザいんですけど。
名前で検索をかけて、電話番号を名簿にメモる。
いっそ、問合せの電話でもくれればいいのに。
その時、私はやっと気が付いた。
朝から電話が全く鳴っていないことに。
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