2章 ~アストレア~

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 その理由には、すぐに思い当たった。  昨日が休日だったからだ。  問い合わせるにしても、丸ノ内生命そのものが休みだし、私達に連絡してみたところで埒が明かない。  契約者のほうでも、大学を出たばかりの小娘集団だと、しっかり理解しているのだ。  ……自分で言って、情けなくなってきた……。  昨日が営業日なら、それでも電話が来ただろう。  祝日はいいクッションだったみたいだ。  情けないけど、救われたと思っておこう。  うん。  さて。  電話するか。  ……。  ……。  ……。 「間瀬、かけろ」  鬼頭チーフ、スルドイです。  受話器に手が出ないことがバレるとは。  と思いきや。 「伊藤、お前もさっさとかけろ。お前らが動かんと、二期生が怖がって動けんが」  なるほど、4人ともが電話を睨んでいたわけですな。  なんだか知らないが、電話機は各自(各デスク)に一つずつあって。  それをそれぞれ睨んでいる姿は、チーフから見たら変でしょうよ。  でも、怖いんだもん……。 「チーフ、変わってください」 「俺は俺であるっつーの。名簿の上からかけて、マニュアルを読めばいいんだよ」 「はい……」  しかたなく受話器をとり、電話番号をプッシュして、マニュアルを引き寄せた。
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