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「京ちゃん、お別れしましょう」
その言葉が一瞬冗談のように思われた。だけどどう見ても栄未が嘘を言っているようには見えなかった。
「…何で?」
「分かんない。ただ、京ちゃんとあたしは違うんだって」
「弥亜子か誰かにそう言われたのか?」
疑心暗鬼になる。弥亜子は以前にも栄未を困惑させることを言っていた。
「弥亜子ちゃんは関係ないよ」
どこかに感情を置き忘れたかのような栄未の空虚さに、俺は何かが違う感覚を覚える。
「栄未、お前大丈夫か?」俺はそっと栄未に触れる。すると栄未はどこか空虚な瞳でこちらを見返した。
「さようなら」
俺の手をそっと離すと、栄未は部屋を出て行った。外で何故かバイクの音が響いていた。何とも無しに見てみると、そのバイクに乗った男のそばに栄未がいた。少しだけ話した後、栄未はバイクに乗った。一瞬だけ、目が合った気がした。
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