一年と3ヶ月後。春

2/4

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
春。杉花粉がどうのと外側ではくしゃみが大量に聞こえそうな時期。京は部屋に籠り、一人原稿用紙に向かっていた。 くわえ煙草の横顔はどこか、苛々を隠しきれていない。そんな京を横目に、栄未は一人ぼーっと外を眺める。 「…今日も天気良いね」 「うん」 「でも花粉症のあたしたちには地獄だね」 「うん」 それ以上の反応を期待できないことを分かりながら栄未は話しかけ続ける。一年以上共に生活すると、相手がどんな返答を返してくるかは明らかになってくる。 その沈黙を破るかの様に京の机の上の電話がけたたましく鳴り響いた。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加