【It's compensated in rain.】

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自宅を目指し歩みを進めるが 身体が重く思うように動かない 暗い道で立ち尽くし、 俯いたまま瞼を閉じる。 『また遊んでね』 余りに楽しそうにしていたから日が沈むまで一緒にいた。 別れ際に交わした約束はつい先日の筈なのに随分昔だったような気がする。 撫でた頭、髪の質感と体温… 鮮明に蘇る度に涙が溢れそうになる。 (何であいつが 死ななきゃなんねーんだよ!) 「…んでだよ… …なんでだよっ!!」 激情を抑え切れず 叫びながらうずくまれば 溢れて止まらない涙ごと 頭を抱えた。 ――― キィ、 (――!) 暫くそうしていた圭の耳に 深夜と先の凄惨さに相応しくない音が響く。 ――キィ…キィ。 金属の擦れる様な、 軋むような音。 圭は涙を乱暴に拭うと立ち上がり音の出所を探す為辺りを見渡した。 (…何だ?) 少し離れた場所。 そこは、約束を交わしたあの広場だった。 (まさか…) 圭は胸が痛む程の衝動を押さえつつ広場へ近付く。 一歩一歩。 広場に近づくほど、 それは現実味を失う。 否定ではなく、信じられずにいるのだ。 薄暗い明かりの下、 広場の端に設置されたブランコを揺らす姿に――
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