【午後の射陽】

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陽射しも穏やか さわさわと心地良く吹く夏手前 陽溜まり出来た12畳のフローリングに大きめの黒いクッションに身を埋めて書物片手に夢狭間な幸福な午後は愛しくも憎い隣部屋に居る彼の絶叫で破壊された。 「圭っ!!」 “バタバタ”とか“バンッ”とか賑やかな騒音を起てて金髪の彼は、さながらヒヨコか何かの様に威勢良く転寝している圭の隣にやってきた。 気怠そうにそれを視線だけで仰げば眉間に皺が二本。 「雪、眉間に皺は癖になるからやめなさい」 雪之は更に皺を深める。 その様子に圭は小首を傾げ納得したように俯せ体制を横に変え、クッションに隙間を作り隣をポンポンと叩く 「わー…〃」 誘われるがままに雪之は 圭の隣に寝転ぶ。 ぴたりと向き合って瞼を伏せ…… ない。 ハッと我に返ったように 身を起こし、最初の姿勢に戻り圭を見下ろす。 観念したように圭は身を起こし胡座をかいた上でクッションを抱きしめながら溜息をついた。 「なんなの?、雪」 その言葉に愕然としたような 大袈裟なショックを表情に浮かべた雪之。 「圭…酷いよ」 「え、何が」 たまの休日をフローリングでごろごろしながら過ごしていた圭には皆目見当もつかない。 「俺の…… …酷すぎるっ! 元に戻さないと 嫌いになるからな!!!」 捨て台詞を半泣きで言い放ち 自室に篭る雪之を呆然と見遣り 圭は胃が痛くなった。
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