雪女

2/9
前へ
/28ページ
次へ
   その女の人が入って来ただけで、電車の中の温度が急激に下がった気がした。    いや、実際に下がったかもしれない。でも夏の電車はクーラーが中途半端に効いてて、はっきりいって少し暑いのだ。調度いいといえば調度いい。    その女の人は真っ白な肌に、光を反射した雪のような銀の長い髪をした、雪女だった。   「人間の世界の夏は暑くてたまりゃせん……車掌さん、クーラーをガンガンにしてくりゃれっ!」    女の人はきんきんとした声でそう叫ぶと、私の向かいに座った。  
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加