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青鬼さんが名残惜しそうに、ゆっくりと立ち上がった。
「ありがとう。ほんのわずかでも、人と仲良くできて、私は幸福だったよ」
電車のドアが開き、青鬼が降りる……
「青鬼さんっ!」
私は知らないうちに立ち上がりながら叫んでいた。
「私の名前くらい、覚えて行ってくださいっ!友達なんだからっ!」
青鬼さんは驚いて振り返り、扉の外でこちらをみていた。
その顔は……笑顔だった。
「神宮鈴音っ!覚えておいてねっ!友達なんだから、生まれ変わってまた会いにきてよ!約束だから!」
青鬼さんは笑顔の目の端から涙を流していた。
しかし、涙を見られたくなかったのか振り返り、背中を向けて返事をすると、まっすぐ歩いて行った。
「絶対に会いに行くよ。私のこの人生の中、最初で最後の人間の…友達……。神宮…鈴音…」
きっとまた会える。ここはいろいろな乗客が乗ってくる、幽霊列車妖怪環状線だから……。
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