決戦前夜

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一人の男が一同の前に歩み出て、号令をかけた。 「よし、みんな集まったな。これよりKKK定例集会を行う。全員、きをつけぃ!」 ざざっ、と全員直立不動の体制になる。 この男、KKKの総統。集団のトップに君臨する者だ。 全員の顔を見回しながら彼は演説を始めた。 「さて、諸君。丁度一ヶ月ぶりの集会だ。我々にとって先月は……狂気の! 地獄の! 悪魔の! 所業としか思えぬあの、忌まわしきイベントがあった! 耐え抜き、今日この場に全員が…全員が無事に集まった事を私は非常に嬉しく思う。さぁ、今一度…先月のスローガンを叫ぼうではないか! 今日は勝利の宣言として!」 総統の言葉に続き、拳を天に突き上げ野太い声で集団は叫ぶ。 「バレンタインなんか」 『怖くない!』 「もらえなくても」 『気にしない!』 「耐え抜け!」 『バレンタイン!』 「くたばれ!」 『バレンタインっ!』   誰からともなく拍手が沸き起こり、社員達(結社構成員・略して社員)はお互いの健闘を称えあった。 肩を叩き会う者、ハグしながら号泣を始める者、様々である。 「静粛に、静粛にっ、諸君!」 総統が声を張り上げ、慌てて社員は再び直立不動の体制に戻る。 「さて…今日集まってもらったのは…他でも無い。明日、我々が『あの』イベントにどう立ち向うか、という事を討論するためだ」 「失礼ですが総統閣下!」 総統の言葉を遮り、一人の社員が素早く挙手した。 「何だね、ナンバー8?」 「我々は既に『あの』イベントには勝ったも同然ではないでしょうか!」 「ほう?」 面白そうに顎を撫でる総統に、社員8は誇らしげに胸を張り宣言した。 「本命と書いてマジと読む、マジチョコはおろか、返す義理一つ無い我々にとってホワイトデー等、恐るに足らずです!」 「そうだ、よく言った8!」 「その通りだぜっ! あんなの菓子屋の陰謀だ!」 やんややんやと周囲から歓声が沸き起こる。 「果たして、そうかな君達?」 総統の後方に控えていた男が、一歩前に出る。 「マジチョコはおろか、返す義理一つ無い? 本当にそう思うかね?」 『副総統閣下!?』 社員達の声がハモった。発言したこの男、結社のナンバー2的存在である。 「そ、それはどういう意味ですか?」 困惑した社員8に、副総統は厳しく言い放った。 「ナンバー8君。君は嘘をついている!」
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