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四人で渡り廊下を歩く。一階にある渡り廊下からは、窓を通してグランドが目に入る。そこには野球部や陸上部が汗を流し動いていた。
「悠生は……もう走らないの?」
美穂が窓の外を見ながら呟いた。悠生は高一の終わりまで、陸上部だった。しかし怪我を理由に辞めた。それも美穂に伝えたことはなかった。
「あぁ……やっぱり知ってたんだ。怪我したから……」
「でもさ、去年の体育祭お前すごかったじゃん。俺名前知らなかったけど、コイツはすげぇって思ったし」
孝夫が話しているのは、去年の体育祭で悠生が、リレーのアンカーになってごぼう抜きしたものだった。正直悠生もあれを機にモテたし、名前も知られた。
「もう走らないのか……」
依然として悠生の顔を見ずに、窓の外に目をやる美穂。顔は見えないが、声から悲しさが伝わってくる。
「怪我が治ったのに走らないの?」
黙っていた美緒が口を開いた。その問いかけは悠生にとっては、辛いものだった。
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