現在

8/9
前へ
/241ページ
次へ
最寄り駅を降りた二人は、黙って閑静な住宅街を歩いた。夜中のせいか人通りは少なく、女性なら不安になるような雰囲気を漂わせている。 「確かに夜中は怖いね」 「うん……」 美穂に元気がなかった。俺は何かしでかしたのではと、心配したのだが発端が見当たらない。 「何か未来に見えたの……?」 俺は見かねて尋ねた。こんな表情を見たのはいつ以来だろう……。 「見えてない。見え……いや、悪い知らせがするの」 「悪い知らせ……?」 首を左右に振って答えた。それは演技ではなく、彼女自身のものだった。 特に何も起きぬまま彼女の家にたどり着いた。立派な一軒家で裕福さを感じる。 「どうする……?」 家の玄関前で、彼女が不安げな表情で尋ねて来た。上がるかどうかを言っているのだろう。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3494人が本棚に入れています
本棚に追加