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後日面接を受け、二人は無事に採用された。電話が掛かってきた時には、これからもっと美穂と親しくなれるということで頭が一杯だった。 悠生は初めてのバイトが終わり美穂と帰宅していた。孝夫は時間より早く切り上げて先に帰っていた。 バイトから帰る道と言っても知れている。バイト先自体が駅の近くにあるため、電車に乗るだけだった。 部活終わりの学生や会社終わりとサラリーマンで蠢く、電車に二人で飛び乗る。悠生は初バイトの緊張からか極度に疲れていた。 「ホントに大丈夫?」 見かねた美穂が声を掛けてきた。悠生は情けないと思いながら、背筋をピンと張る。 「……余裕余裕」 「ぷっ!顔が疲れを物語ってるよぉ」 悠生の姿を見て吹き出す美穂。恥ずかしかった。でも彼女が笑顔ならいいやって思った。 時刻は二十二時過ぎ……。窓から見える色は暗く、その中を電車が突っ切る。悠生の方が家までの距離が美穂よりも近かった。
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