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「でも美穂働き屋さんだね。俺は足が付いていかない」
「慣れたらすごい楽な仕事だよ。正直あれで時給八百は大きい」
「みんな時給八百にこだわんだな。孝夫もこれで時給八百はデカいとか興奮してたから」
悠生が話した内容がおかしかったのか、美穂はひとしきり笑った後こう答えた。
「悠生って意外。案外面白い奴じゃん」
美穂が喜んでいて嬉しかったが、どこがおかしいかわからず困惑した。でも笑ってくれることで、心の中がポッと温かくなった。
「次だよね、駅」
車内アナウンスが悠生の降りる駅名を告げた。これも言ってないことだから、悠生は驚いた。
「君の力には驚きだよ」
「そうかな。私これには慣れたから」
遂に電車がゆっくりと減速していき、止まった。
「じゃあまた学校で」
「気をつけて帰れよ」
気をつけて帰れよ……。本心からそう思った。悠生は惜しみながら、美穂に手を振り別れた。
電車が去っても、手を振り続ける美穂を見て、体中熱を帯びていくのを感じた。この時、すでに悠生は恋に落ちていた。
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