過去

11/18
3494人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
昼休み。悠生は孝夫と机を引っ付けてお弁当を食べていた。 「夢中になりすぎるのは危ないぞ」 孝夫が唐揚げを箸でつかみながら突然口を開いた。 「美穂のこと?」 「おう、彼女の性格考えてみろよ。人懐っこい性格の上、あんな可愛けりゃ、男もほっとかねぇよ」 悠生はそんなこと今まで考えたことがなかったので、少し不安になった。 言われてみればそうだ。彼女は可愛い上に、性格も明るく人懐っこい。自分は特別だというのは、勘違いだということを指摘された気分だった。 悠生が黙っていると、孝夫は続けてこう言った。 「先輩達だって狙ってるっていう噂も耳にする。美穂ちゃんは友達感覚だろうけど、男と歩いてるの見たことあるしよ」 「でも……」 悠生は言葉が続かなかった。自分だけは他の男と違うと思いたかった。 悠生が黙っていると教室内が、騒がしく感じた。今までそんなことなかったのに。楽しそうな会話や笑い声が教室に飛び交う。 胸が痛くなった。現実を思い知らされたかのような、苦い何かが体中を駆け巡る。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!