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昼休み。悠生は孝夫と机を引っ付けてお弁当を食べていた。
「夢中になりすぎるのは危ないぞ」
孝夫が唐揚げを箸でつかみながら突然口を開いた。
「美穂のこと?」
「おう、彼女の性格考えてみろよ。人懐っこい性格の上、あんな可愛けりゃ、男もほっとかねぇよ」
悠生はそんなこと今まで考えたことがなかったので、少し不安になった。
言われてみればそうだ。彼女は可愛い上に、性格も明るく人懐っこい。自分は特別だというのは、勘違いだということを指摘された気分だった。
悠生が黙っていると、孝夫は続けてこう言った。
「先輩達だって狙ってるっていう噂も耳にする。美穂ちゃんは友達感覚だろうけど、男と歩いてるの見たことあるしよ」
「でも……」
悠生は言葉が続かなかった。自分だけは他の男と違うと思いたかった。
悠生が黙っていると教室内が、騒がしく感じた。今までそんなことなかったのに。楽しそうな会話や笑い声が教室に飛び交う。
胸が痛くなった。現実を思い知らされたかのような、苦い何かが体中を駆け巡る。
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