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「でも……孝夫も美緒さんに夢中なんだろ?それなら一緒だよ」 「そんなことねぇよ。ただのバイト仲間。恋愛感情はねぇよ」 ポツリと孝夫は言うと、つかんでいた唐揚げを口に運んだ。 双子の姉である美緒は、美穂と顔は似ているが、男慣れしている雰囲気は漂わなかった。 「仲良くするのは良いこと。だから……俺は諦めないよ」 そう言ってから自分が、お弁当にお箸を一回も付けてないことに気付き慌てて、食べる。 「気持ちは固いね。幸いクラスが違うくて良かったな。一緒だったらお前嫌がらせの嵐だぞ」 「嫉妬……?」 「まだお前らの仲の良さに気付いてない奴らが多いから、今は大丈夫だがな。でも大丈夫。俺が助けてやんよ」 孝夫の最後の一言に少し安心したが、それでも何か腑に落ちない気分だった。 何か考える暇なく昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴り、悠生は慌てて箸を動かしていた。
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