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「苦い思い出があって……県大会行ける大会で落ちたんだよ」
悠生は苦い表情で言う。あの時は悲惨だった。
百メートル走を専門としていた悠生は、予選で肉離れを起こし、県大会をかけた決勝で無惨にも散った。
それから何回か大会に出場するものの、肉離れがくせになり、治療の日々。最後には走ることを禁じられるようになった。
悠生の言葉から話したくない雰囲気を感じ取ったのか、美緒は話題を変えた。悠生も嬉しかったし、話したくなかった。
「じゃあ委員会頑張って。美穂さんもね」
孝夫はそう言って美緒と共に、げた箱の奥に消えて行った。美緒は手を振りながら、控えめな笑顔を作っていた。
悠生と美穂は二階にある会議室に向かう。さっきの話題のせいか悠生も美穂も表情は明るくなかった。
悠生は暗い美穂を初めて見た気がした。階段を上がる最中も、心配で仕方なかった。でも、それは自分のせいだとは思わなかった。
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