現在

3/9
前へ
/241ページ
次へ
「何じっと見てんのよ」 「……ごめんごめんつい」 彼女はそんな俺を怒りながらも、満足げな表情を顔に浮かべる。 ミックスジュースを飲んでいるときの横顔にまた見とれてしまう。 正端な顔立ち。艶のある茶髪。細い切れ長の瞳。そのどれもに俺は惚れ惚れしていた。 「アイドルが墜落事故に遭ったのにさ、こんなに冷めてるのは私たちだけちゃうかな?」 「確かにね……」 客席がほどよく埋まった駅内にある喫茶店には、あらゆる客がいるが、だいたいがこの話題で持ち切りだった。 おじさんが持つ新聞には、大きく人気アイドル飛行機墜落と書かれているが見える。 「未来が見えるなら止めてあげればいいのに」 俺が皮肉っぽく美穂に言う。 「バカ!未来を変えるととんでもないことになるのよ~怖い怖い」 茶化すように軽く言い放つ美穂は、自分の力に罪悪感はなさそうに思えた。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3494人が本棚に入れています
本棚に追加