第零話「ゼロ」

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 ただ、闇を走っていた。  追撃部隊の攻撃をかわしながら、ひたすら走っていた。  安らげる場所を求めて。  すでに、満身創痍だった──。  けど、止まることは死を意味する。  だから。  生きるために彼女は走っていた。  ふと、闇が晴れた。  やっとのことで市街地へと抜け出たのだ。  ここまでくれば──。  しかし、追撃部隊は強硬手段に打って出た。 『ゼロを破壊せよ』  構えられるマシンガン。  一斉掃射の体勢に入った。 「ちっ!」  彼女は自身の専用武器である“リニアハンドガン”二丁を構える。 戦場で『黒ネコ』と呼ばれ恐れられていた彼女の証である。  小柄な彼女に似合わず、その銃はゴツクてデカイ。発射した時の反動も凄まじいと聞く。  量産型では到底扱えない。  だから、彼女は特別な存在として固有名称『ゼロ』を与えられた。  『ゼロ』はハンドガンを正面に構えた。  できれば撃ちたくない。自分の妹に当たる存在の者たちを。  けれど。  生きるためには。  ──瞬間。  ──無数の閃光。
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