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しかし、刹那──。
少女はゆらりと揺らめいた。
「ちょっ……! しっかりしてください!」
僕は思わず少女を抱き止めていた。
腕の中の少女は酷く震えていたけれど、僕が敵ではないとわかった途端、体を預けてきた。
「い、今救急車を呼び──」
「──呼ばないで……!」
少女は声を振り絞るように言うと、そのまま意識を失った。
「だ、大丈夫ですか!」
揺すってみても反応はない。
しかし、救急車を呼ばないわけにはいかない。警察も──呼ぶべきであろう。
なのだが。
僕は。
少女が眠っているだけだとわかった瞬間、呼ぼうとは思わなくなった。
少女の身に何があったのかは知らないけれど。
今だけは。今だけは眠らせてあげようと思った。
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