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「[Replay]?誰のだ?」
オレは自宅で、見覚えのない1本のビデオテープを見つけた。
「姉ちゃんのかなぁ…」
きっと姉が、ドラマか何かを録画したんだろう。
オレは退屈だったので、そのビデオを見る事にした。
[ガチャ…]
テープをビデオデッキに入れ、再生する。
『……あっ。目、開けたよ。こんにちは、[タクヤ]』
かなり若い頃の父がカメラを覗きこんで言った。
[タクヤ]と、オレの名前を読んでいる。
「…ビデオレターか?」
オレは、そう思いながら、しばらく見ていたが、両親のやり取りが、不自然な事に気付いた。
これはビデオレターじゃない。
両親は、明らかにオレに話し掛けている。
生後間もない赤ん坊が、ビデオカメラなんて持てる訳がない。
「オレが見た事が、ビデオになってんのか?」
オレは、普通では有り得ない光景に、普通では有り得ない想像をする。
しかし、その時オレは、目の前の非現実な光景に、何故か疑問も恐怖も感じなかった。
完全に忘れている赤ん坊の時の自分。
その時の記憶がある人間なんていないだろう。
オレの頭の中は好奇心とビデオに対する興味で一杯だった。
オレは夢中でビデオを見ていた。
家族、親戚、出て来る人達がみんな若い。
家や景色も、今とは全然違った。
自分が知らない自分の記憶。
オレは楽しくてたまらなかった。
やがて、ビデオの内容が自分の記憶に追い付く。
「うわぁ…懐かしいなぁ。」
忘れていた記憶から懐かしい記憶へと内容が変わっていく。
「なんだか走馬灯をビデオで見てるみたいだな…」
オレはそう思ったと同時に、1つの疑問が頭に浮かんだ。
「一体どこまで見れるんだろう?今の自分まで映ってんのかな…」
オレはその疑問が、どうしても気になり。[早送り]のボタンを押した。
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