前奏

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「もうこんな仕事はなるべくさせない」 親のように俺を育ててくれた矢部さんは俺の頭を撫でる。 「俺、矢部さ──いえ、執行委員長の命令なら何でもします」 この人に、憧れた。 だから──ここにいる。 こんな嫌な仕事でも、平気でこなせる。 俺は──ヒドい。 矢部さんに褒めてもらうためだけに、自分とは何の関わりもない人間を殺す。 知っていても辞めないのはやっぱり矢部さんに気に入られたくて。 矢部さんと対等でありたくて。 俺は自分の為にしか動けない、ヒドい奴だ──。 「いや、この仕事はもう少し大人になってからでいい。今は、こっちの仕事に専念しろ」 矢部さんは、俺に白い封筒を手渡す。 「次の任務だ」 「はい」 それがどんな仕事かわかっていた。 だが俺は──。 矢部さんに褒めてもらいたくて、思わず封筒に手を伸ばしてしまった。
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