優しく

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「少女の名は、双葉奏音(ふたばかのん)。よろしく頼むぞ?」 「はい……」 珍しい名前だと思った。 「奏音」と書いて「カノン」と読むなんて。 「……」 しかし、俺の心は白い封筒を貰ったときから締め付けられていた。 「……」 俺は、人間に白い封筒を手渡す事が嫌いだった。 白い封筒は、その人にその自分の寿命を伝えるメッセージが入っている。 それを見て、涙を流す人、怒る人……とにかく嫌いだった。 人の不幸を知らせる手紙を渡して、その書かれた日にちに自分が殺す──。 何の罪もない人間を。 これでは、黒い封筒を届けた方がまだマシだ。 黒い封筒は、誰かからの恨みの手紙。 恨まれるような事をする方が悪い。 だから、躊躇いがない。 少なくとも──初めての相手はそうだった。 命乞いをする男が急に汚らしく見えた。
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