§始発§

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 どこで人生の歯車が狂ったのだろう……。  思い返す限り、あの日、あの時からだろう。  そう、それは数日前――。  蛍が通う桜ノ宮高校は桜ノ宮市の中央を流れる笹川に面する様に立っている。  桜も咲き終わり、植物達が初夏の準備を始める頃。  花粉症の回復と引き換えに五月病になる人が続出してくる。  こんなだから日本はダメになるんだ!  そんな政治家の嘆きも虚しく過ぎる中、桜ノ宮高校では新入生の為のイベントが行われようとしていた。   ▼  ◇  ◆  ▽  蛍達、新入生は体育館への渡り廊下を渡っていた。  高校生になって新しくなった制服に身を包んだ生徒が体育館に飲み込まれて行く。  一部の人間は意気揚々と。  また一部の人間は欠伸を噛み殺し、目尻に涙を浮かべながら。 「で、蛍。部活何にすんの?」  初めに、声をかけたのは前者に分類されるだろう、短く髪を切った少年だった。  美少年に部類されるであろう少年はいかにも「運動やってます」的な髪の後ろで手を組みながら歩いている。  普通なら他人の迷惑も考えろ、と文句を言うべきシーンだが、不自然な程に彼がやっていると様になるのだから不思議だ。  切れ長の目から感じられる子供の無邪気さと優しさもきっと一役買っているのだろう。  正直、少し思う。  イケメンってずるい。
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