§始発§

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「んー、帰宅部かな?」  一方、こちらはその話し相手。  こちらはこちらで、見るからに後者な彼は、生まれつき勝手にかかる髪先のカールをいじりながら隣にいる少年が答えた。  やや、たれ目気味の細い目は眠そうに瞬いている。 「高校時代だぜ。どっかしら入れよ!」  そんな友人の言葉に蛍は苦笑いでもって返事をした。  そんな、他愛もない会話……、彼らは俗に言うオナチュー(同じ中学)どころか、小学校からのつきあい、通称、幼なじみであるというのだから、世の中分からない。  ――とまぁ色々とあったりするわけなのだが……。  それより何より、とりあえずそろそろいい加減に彼らの名前を紹介しておこう。  イケメンの脇にいる少年――。  つまりは、くせっ毛に寝癖をプラスした台風真っ只中の髪型な方が柳杖寺(りゅうじょうじ) 蛍(ほたる)。  それに対して、先程からどちらかというとよく喋っている美少年が佐々木(ささき) 俊介(しゅんすけ)にあたる。  本来、二人のクラスは違うのだが――まぁ、今回の集会に限っては体育館にて各自集合なので何ともなしに二人で行く事になった。  まだ、入学して1ヶ月もたっていないこの時期、元来友達作りがあまり得意では無い蛍が友達を作れるはずもなく、このようなありさまに至っている。  俊介の方はというと、友達はいるのだが、長い付き合い上、なかなか友達のできない友人を見捨てる事もできず、付き合っている――といった具合だ。  要するに、面倒見が良いのである。  この容姿にしてこの性格。  まぁ、そりゃ、女子も黄色い声を上げるわけだ。  因みに、クラスの女子の目を避けるのに苦労した事は蛍に話してはいない。  何故かって?  実に簡単な理由さ。  ただ単純に、そんな事わざわざ言ったら、どんな奴だって多少なりとも気にするだろう。  それが原因で疎遠にでもなったら、それこそ本末転倒だ。  俊介としては、まだ蛍の友人を止める気は無い。
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