§始発§

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「いや、その隣」  蛍は指でトントンと紙面を叩く。 「『ミステリー研究会』……、お前ミステリーなんて好きだっけ?」  俊介が思いっきり怪訝な顔で蛍の顔を覗き込んだ。  蛍は軽くため息を吐きながら答える。 「はぁ……、俺は基本的にミステリー好きだよ。『金田一』シリーズと『アガサ・クリスティー』シリーズは読破してるぞ」 「へぇ、『金田一』シリーズなら俺も読んだ事あるぞ。『じっちゃんの名にかけて!』ってな」 「そのじっちゃんの方だよ」  蛍は呆れ眼で目の前の友人を見た。  当の本人は「金田一のじっちゃんのストーリーなんて有ったか?」等と言っている。  これ以上この話題を続けても発展性が感じられないので、流す事にした。  話題がコロコロ切り替わるのがこの友人と蛍の日常会話である。 「それにしてももったいないよなぁ」  腕を頭の後ろに組みながら俊介がつぶやいた。 「何が?」 「だってお前が運動部に入れば……」 「それは言わない約束だろ」  そう言うと蛍はまったりした表情のまま前を向く。
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