出発

4/6
前へ
/75ページ
次へ
駅に着いた途端私はすぐさま切符を買い,駅のホームまで無意識に早歩きしていた。 エスカレーターの途中自分の荷物につまづき,こけそうにもなった。 それでも私は早く待ち合わせ場所に行きたかった。 きっと懐かしの友に会いたいという気持ちが,こんなにも私を急がせたのだろう。 ホームにはすでに電車が来ていた。 大きな水色の旅行バッグを両手に持ちながら,電車に乗り込む。 と同時に,プシューと音をたてながら扉が閉まった。 どうやらギリギリだったらしい。 私は席には座らず右の壁に寄り掛かりながら,ドアの前でじっと立っていた。 窓から見える懐かしい風景は私に心地よい緊張を与える。 友達の成長ぶりを一人一人脳内の現在予想図に描きながら,来たる場所まで静かに時を過ごすことにした。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加