3633人が本棚に入れています
本棚に追加
「事故だから。だから、……気にしないで」
淡々と言われたその言葉に、何故か胸が、チクリと痛んだ。
……どうしてだろう。
「気にしないで」と言われて悲しんでいるのか、俺は……?
「海斗、……聞いてる?」
自分でもわからない複雑な感情が頭の中で入り乱れる中、蛍の顔が目前まで迫り、目がぴったりと合ってしまう。
「な……っ!」
上目遣いをして、俺を見る蛍の姿に、胸の動悸が更に激しくなっていく。
――なんで、俺……こんなに動揺しているんだ……っ! 蛍は、男なのに……! 男なんだぞ、蛍は……!!
「海斗……?」
蛍が不思議そうにして、俺の名前を呼ぶが、その呼びかけにどうしても反応する事ができない俺がいる。
頼むから、そんな目で見ないでくれ……と、そう言いたかったが、それを言えば蛍に確実に怪しまれてしまう。
キスをした直後だ。
そのせいで多分、俺は今、蛍に対して変な意識を持っているんだろう。
時間が経てば、この気持ちもすぐに冷めてくれるはずだ。
そうだ……。
きっと……そうに違いない!
最初のコメントを投稿しよう!