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――キーンコーン・カーンコーン!
授業の終わりのチャイムが鳴る。
「あ、授業終わっちゃったね」
「あ、ああ……」
俺は蛍を見ながら、頷く。
まだ、意識しすぎているからだろうか。
……蛍から、視線を外す事ができない。
これでは早くも、さっきの自信が砂の城のようにあっけなく崩れ落ちそうだ。
一方、蛍はいつものダルそうな表情で、保健室の先生に提出しなきゃいけない保健室の診断書を書いていた。
そして、それを書き終えると先生の机の上に置く。
「……それじゃあ、僕は先に行くよ」
「ああ……」
ガランと、扉が閉まるのを最後まで見届ける。
蛍は先に保健室から出て行った。
一人だけ、保健室にポツンと残っていた俺は、まだ動く事が出来なかった。
……熱い。
顔の赤らみが消えない。
蛍が出て行ってから、何故か保健室の雰囲気が急に寂しくなったような気がした。
手を胸の位置に重ねてみる。
バクン、バクンッ――、と心臓が脈打つように凄い速さで鼓動している。
この様子では、しばらく落ち着きそうにないな。
「くそ……、蛍は男なのに……」
愚痴をこぼしながら、顔を上にして天井を眺めた。
―――俺。
――――――俺は……。
……蛍の事が――――。
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