温もりハンバーグ

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          「俺は、大好きな人に幸せになって欲しい……かな」             「兄……さん?」   すごく真剣な声色だった。 兄さんの言葉には、一つの迷いもないように思えた。 欲しいものが“手に入りそうで、手に入らない”。 勘違いかもしれないが、兄さんの表情から、そのような気持ちが伝わるように感じてしまった。   「……なーんてな! そんな真面目な願い事なんて俺がするかって」   「な……っ!」   「なんだ~? 蛍、もしや騙されたのかな? クックック」   「う、うるさいなぁ、もう!」   さっき、僕が考えているのはどうやら勘違いだったようだ。 ああ、そうだな。 これが兄さんだ。 このお馬鹿でアホ丸出しで、そして僕を苛立たせるのが、伊藤壮士なんだ。   ああ、騙された僕はなんて……愚かなんだ。   「兄さんの馬鹿! ボケ、アホ! この変態シスコン野郎ぉ~っ!」   「ふははははっ!! そんな言葉、痛くも痒くもないぞ」   「うぅ……ばか」   ふぅ……。 どうやら、兄さんとのこのコミュニケーションはまだまだ続くらしい。 できるなら、この変態でアホな兄さんに一から再教育を施したい。 ……もちろん、無理な話なんだけど。 本当に溜め息だらけの生活だよ。   はぅ……、一体いつになったら僕はこの生活から解放されるんだよ。   「……はぁ~」   苦々しい溜息を吐きだした後、僕は兄さんのお尻に思いっきり蹴りを入れた。 だが、その際、兄さんにスカートの中を覗かれたのは僕の失態である。   はぁ~。  
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