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それにしても、早瀬さん。
あの人、本当に綺麗だったなぁ。
兄さんが尻に敷かれていた事も驚きだ。
何か、兄さんの弱みでも握っているのかな?
……今度、聞いてみよう。
「ん……」
ちょうど、一日の振り返りに区切りがついた所で、兄さんが目を開け、僕の肩から頭を起こす。
「け……い?」
「あ、起きた? 兄さん、もう御飯できているよ」
「ん……あ、あ」
まだ完全に眠気から覚めていないのか、兄さんは目を擦って返事をする。
「ほら、早くしないとせっかくのハンバーグも冷めちゃうよ」
兄さんの腕を掴んで、一緒に立ち上がる。
「ハンバーグ……?」
立ち上がった後、兄さんはテーブルの方を向く。
テーブルの上に置かれたハンバーグを見て、眠そうな目が一気に覚醒したかのように、大きく開けていく。
「ハンバーグ、キタァァアアアアアアアーッ!!」
いきなり大声で叫びだした事に反応が遅れて、僕は耳を塞げずにその大ボリュームの叫びをすぐ隣で聞いてしまった。
「ッ~~~~~~!!」
耳の中でキーン、と遠くで鳴ったような音が何度も聞こえる。
「ふっはっはっはっは! 壮士、完全復活!」
「に、兄さん! き、近所迷惑だって何度言ったらわかるんですか!」
「ああ、蛍! すまん、すまん! でも、少し寝たらすっきりしたぞ」
先ほどまで、大人しく寝ていたのに今は打って変わって、豪快な笑い声でリビングを響かせている。
ああ……、なんだか急に頭痛が……。
「はぁ~……」
溜息をつきながら、先にテーブルへと移動する。
席に着くと、後に続いて兄さんも椅子に座る。
「いただきまーす!」
「……いただきます」
ボソッと呟くように言う僕とは対照的に、元気有り余るくらいの声で言う兄さん。
ああ、急に兄さんの事がうっとおしく思えてきた……。
「……さっきまで、あんなにテンションが低かったのに……馬鹿兄さん」
聞こえないようにボソボソと愚痴を垂らす。
「ん、何か言ったか? 蛍」
「別に何も言っていませんよ、はぁ~」
再び、溜息をついた後、ナイフとフォークを持ち、ハンバーグを口に入れていく。
美味しい、美味しいんだけど……。
少し冷えて温くなったからか、味の美味しさが軽減しているような気がする。
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