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「……冷えたから、あんまりだね」
「そうか? 俺は美味しいと思うけどな!」
「僕はもっと早くに起きて、出来立てのハンバーグを食べて欲しかったです」
「ごめん、ごめん! ……でもさ、蛍」
「……何ですか?」
兄さんが手の動きを止める。
そして、笑いながらだが、どこか真剣な眼差しで僕を見る。
「ハンバーグってさ。こう……なんというか、熱すぎると口が火傷しそうでさ。逆に冷たすぎると、美味しくなくなる。それは人で例えても同じでさ。熱すぎる奴は人気を帯びるけど、冷たそうな人はやっぱり係わりにくいだろ?」
「まぁ、……それはそうですけど」
「だから、俺はその間である“温い”がいいと思うんだ。熱すぎず、冷たすぎず……ちょうど良い温かさで満たす……ってな!」
「ぁ……」
意外な言葉に僕は唖然としてしまう。
熱すぎず、冷たすぎず……、自分は『温い』がいい。
何故だろう……?
そう言った兄さんの言葉に何故だか、心が温かくなるのを感じた。
「ん? 蛍、どうした?」
「な、なんでもないです! ただ、兄さんがあまりにも真面目な事を言ったので……」
「そうか? 俺は常に真面目だが?」
ニコッ、と笑いかける兄さんに僕は動揺してしまう。
「ま、まさか……!!」と言って、驚愕の顔を浮かべ、兄さんが顔を近づけてくる。
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