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「蛍よ、兄さんに惚れたか!?」
「違いますよ、そんな事ありあえませんから」
「ぐはっ! 即答とは……っ! さ、さすがだ……マイシスター、もといフラグ・クラッシャー、蛍」
「勝手に変な称号をつけないでください! というかまず、フラグ・クラッシャーって何ですか?」
「だが、だがな!! 俺にはまだ最終兵器があるのだ!!」
「……そこ、スルーですか。それに最終兵器って……、なんだか怪しげで嫌な感じがするから使わないでください」
「今こそ、最終兵器の出番だ!!」
「ああ、僕の言うことは完全に無視なんですね……」
はぁ~、と嘆息をつきながら、ハンバーグを口に入れる。
……なんとも、温い。
絶対に出来立てのハンバーグの方が美味しいと思うのに……。
だが、兄さんの言葉では、きっとこの温さがいいのだろう。
さっきの言葉が頭に過る。
――熱すぎず、冷たすぎず……ちょうど良い温かさで満たす……――
「ねぇ、兄さん」
「おっ! なんだ!! ま、まさか……! 俺の最終兵器を受けてくれるのか!?」
「……違いますよ」
「ん? なら、なんだ?」と疑問を表情に浮かばせる兄さん。
僕はこれを言おうか迷いながらも、ゆっくりと口を開けた。
「ハンバーグ……だけどさ」
「ん? ああ! ハンバーグがどうかしたのか?」
「ちょうど良い“温かさ”……だね」
僕の言葉に兄さんは一瞬目を丸くしたが、すぐに笑顔を見せた。
「……だろ!」
「まぁ……ちょっとだけね」
兄さんは、うんうんと頷きながら、手の動きを再開して、ハンバーグを口に運んでいく。
「やっぱ、蛍の料理、美味いよ」
「ん、……ありがと」
すごく美味しそうに食べている兄さんを見て、満足する。
僕もナイフとフォークを動かして、ハンバーグを食べていった。
それからその後、お互い会話もなく黙々とハンバーグ食べていったが、どこか温かい雰囲気につつまれているような……そんな感じがした。
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