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「ふぅ~」
つい、気の抜けた息を吐いてしまう。
それにつられてか、ピタッ、と蛇口の先から雫が床に落ちた。
浴槽から出る蒸気を眺めながら、僕は笑みを浮かべた。
「気持ちいい~!」
タオルを体に巻いたまま、浴槽にゆっくりと肩まで浸かる。
やっぱり気持ちがいい。
この時間で一日の疲れがとれると言っても、過言ではない。
「はぅ~……、いい湯加減」
両手でお湯をすくい、それを顔にかける。
パシャパシャッ、と水が弾く音が浴室を満たす。
お風呂に入っている時が一番幸せだ。
だって、この時間帯のみ、兄さんに何もされないんだよ?
あの変態妄想の兄さんの魔の手から、一時でも逃げられると思うと、これ程幸せな事はありません。
いや、本当に。
それくらい、僕にとってはお風呂の時間は重要なのだ。
「はぅ~……もう、最高だよ~」
両手を頬に当てて、嬉しい声を上げて喜ぶ。
ああ、この時間が一生続けばいいのに。
でも、さすがに一生だと上せてしまうよね……。
「惜しいな……はぁ~」
天井を眺めながら、浮かばれない溜め息をつく。
……その時だった。
「――お風呂、お風呂……っと」
溜め息を吐き終えたと同時に、浴室のドアの向こう越しで兄さんの声が聞こえてきた。
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