温もりハンバーグ

33/39
前へ
/161ページ
次へ
  「……は?」 つい、声を上げてしまう。 なんだか、とてつもなく嫌な予感がする。 モザイクミラーで飾られた浴室の扉を見つめる。 そこには、服を脱いでいる兄さんの姿がぼやけて映っていた。 「ちょ、待っ――!」 その言葉の続きを口に出す前に、ガランッ、とドアの開く音がする。 同時にドアの先から、腰にタオル一枚巻いただけの兄さんが……。 「あ、あれ? 蛍、入っていたのか!?」 少しびっくりしたような声色で僕へと話しかける。 僕は体に巻いていたタオルを手で押さえながら、兄さんを軽く睨む。 「に、兄さん……」 「あ、あははは……! いや、その……とりあえず、すまん!」 僕の睨んだ視線を逸らしながら、兄さんは頭を掻きながら謝罪した。 兄さんも故意でやったわけではないのか、顔を真っ赤にさせて同様していた。 そんな兄さんの顔を見ていると、なんだか怒る気も失せてしまう。 ――あれ……? 兄さんの目をよく見てみると、視線がある一点に集中している。 僕はその視線を辿っていき、そして兄さんがどこを見ているのかを分かり、思わず赤面してしまった。 「に、兄さんっ!」 「な、なんだ? 蛍」 「……さ、さっきから……僕の胸ばかり、その……見すぎです!」 「あ……っ、いや、すまんっ!」 「っ……も、もうっ! しっかりしてくださいよ! 兄弟なんですからね、僕達は!」 「あ、ああ……っ」 「とりあえず、出て行ってもらえますか?」 「そ、そうだなっ! ごめんな!」 兄さんはそう言って、浴槽から出ようとドアへ手を掛ける。 「……あれ?」 兄さんが呆気のない声を上げる。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3633人が本棚に入れています
本棚に追加