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「蛍さんや、蛍さんや。そろそろお風呂に入らせてもらえんかね? 正直足が冷たくて寒くて風邪ひきそうなのさ」
「いやいや、一体だれのせいで今このような状況に陥っているのだろうかね? 壮士さんや」
「いやぁ、ホント、マジ、すみませんっした!」
「軽すぎ。それでもってヘラヘラしないでください。……まぁ、一緒に浸かるのは兄弟のよしみで別に構わないですけど、変な事したら包丁で手首を差しますね」
「おおぅ、怖いな~……。そんな事言わなくてもセクハラなんてしないよ!」
……本当だろうか?
なんか非常に怪しいですよ。
兄さんが遠慮もせずに堂々と浴槽に入り、僕の隣へ腰を下ろす。
僕の家の浴槽は、まぁ大人二人程度なら普通に座れるスペースがあるので問題はない。
「あ~あ、兄さんもお風呂に入ったから浴槽からお湯がただ漏れしちゃったじゃないか。……もったいない」
「そんな細かい事別にいいじゃないかぁ~。ホント、蛍は俺にきついねぇ」
とほほ~、と兄さんが涙ぐむ真似をした。
……大げさだ。
「……そんなにきつくされたくないなら日頃の態度を直してください」
「無理」
「はやっ!! 即答しないでくださいよ! ……ホント、残念な兄を持ったよ」
見た目や能力はハイスペックすぎるのに、中身が本当にどうしようもなく終わっている。
弟だから言えるが、黙っていれば兄さんくらいならすぐに彼女なんてホイホイできるだろうに。
あーあ、もったいない。
こういうところ、本当に損しているよな、兄さんは。
「いやぁ、蛍が可愛すぎるのが罪なのさ」
「責任転嫁はやめてください。僕は男です。そして、あなたの弟です。近親相姦反対、同性愛絶対ダメ~」
「大丈夫だ、背徳がある恋愛ほど溺れてしまう。問題ない!」
「いやいや、問題だらけでしょうが」
そもそも、背徳のある恋愛ってどんなだ。
そんな昼ドラみたいな恋愛は見たくないし、したくもない。
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