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兄さんに僕が弟の「蛍」である事を理解してもらうのに、だいたい一時間くらいかかった。
兄さんは僕が「蛍」だという事に初めは戸惑ってはいたものの、すっかりと納得してくれた。
後、僕を女の子の姿に変えたジュースの事も兄さんに話したが、ジュースの事については兄さんは知らなかった。
となると……手がかりとして残っているのはお父さんだけになる。
……まさか、お父さんが?
僕はお父さんに直接聞こうと、家でじっと待っていたのだが、なかなかお父さんの帰ってくる気配はなかった。
「お父さん……何かあったのかな……」
時計は既に11時を回っていた。
いつもなら、遅くても9時までには必ず帰っているのに……。
あまりにお父さんの帰りが遅いので心配になっていた所に、兄さんがやってきて僕に話しかける。
「あれ? 蛍、知らないのか?」
「え……?」
「父さんは今日から出張で海外に行ってるから、帰ってくるのいつだかわかんないぞ?」
「……うそ、だよね?」
「本当だよ。俺が今まで蛍に嘘を言った事なんて一度もないだろ?」
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